特集 縁の下の力持ち!農業を支える様々な企業

case.1 品種改良
国立研究開発法人
農業・食品産業技術総合研究機構 (茨城県つくば市)

 今回は農業を支える品種改良等の技術について、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(以後、農研機構) 果樹茶業研究部門 品種育成研究領域長 別所さんにお話を伺いました。

△別所さん。ナシの育種圃場にて。


品種改良の最前線!最後の決め手はベロメーター

―まず、貴機構について教えてください。
 当機構はさまざまな作物から畜産、農業機械、食品、環境など農業や食に関わる幅広い分野について取り組む国立の研究機関です。
 その中で、ここ果樹茶業研究部門 品種育成領域では、ナシやクリ、核果類(モモなど真ん中に大きな種子がある果実)の育種や、育種技術の開発、遺伝資源の解析や収集・保存等を行っています。
 核果類の育種ですと、例えば最近発表したモモの品種「さくひめ」は、温暖化対策の一つとして開発された品種です。モモが花を咲かせ実をつけるには一定量の低温が必要ですが、温暖化が進行し冬の低温量が少ないと芽の出方が悪かったり正常に花が咲かないことがあります。そこで、ブラジルのモモと日本のモモをかけあわせて、低温要求量が少なく、かつ味の良い品種を開発しました。

―開発にはどのくらいかかりましたか?
 「さくひめ」は三世代で約22年かかりました。果樹は交雑をして品種登録の出願をするまでに最短でも一世代15~20年程はかかるので、早い方だと思います。

(写真)モモの有望品種「さくひめ」

―ずいぶん時間がかかるのですね!
 樹が育って花が咲いて実がついて、それを選抜して交雑して育てて、という繰り返しですからね。私の専門はリンゴですが、開発に関わった「ふじ」は23年かかりました。余談ですが、最終的に選抜する判断材料は人間の舌です。育種家の勘というか、ベロメーターというか(笑)。 リンゴの育種をしていた時は1日約200個は食べていましたよ。

―なかなかハードですね!選抜された実が実際に品種登録されるまではどのような流れがあるのでしょうか?
 有望系統を選抜した後、「系統適応性検定試験」といって都道府県の試験場で栽培試験をしてもらい、高い評価を得たものが品種登録されます。最終的に品種登録されるのは、例えばナシだと1000個体から1個体くらいですね。    
(写真)ナシ畑。幼木から成木まで植わっている。

―気が遠くなりますね…その分、品種が広まると喜びも大きそうですね!
 そうですね、やはり皆さんにご利用いただいて「あの品種いいね」という話を聞いた時は嬉しいですね。農業経営で価値のある品種を「経済品種」と言い、1%のシェアを取ることも大変ですが、「ふじ」は約50%を占めています。力のある品種が出ると産地も活性化するので、これからも今までにない経済品種の開発に取り組んでいきたいと思います。

―まさに縁の下の力持ちですね!ところで、品種を発表したあとは現場任せなのですか?
 出して終わり、ではないですよ。品種の普及拡大に伴い試験段階では出てこなかった生理障害などが出てくるので、その都度どういった対策が必要なのかを都道府県の試験場の担当者と一緒に検討したり、新たな研究プロジェクトを立ち上げる場合もあります。メジャーな品種ほど農業への影響も大きいですし、アフターフォローも重要です。

―農家さんと接する事もありますか?
 よくありますよ。生産者大会や研修会等で講師として呼ばれることもありますし、農家さんが当機構へ視察に来られる場合もあります。お付き合いのある農家さんとは「あの品種はどうですか?」など情報交換をすることもあります。

―フランクですね!研究者の方はずっと研究室にこもっているイメージでした。
 所属ユニットによって異なりますが、育種は調査を含め半分以上が畑仕事ですね。春先は苗を植え、冬場は寒いなか剪定作業をし…半分農家です(笑)。昔は畑仕事の方が多かったのですが、今の若手研究者は早いうちから論文も書かねばならず、畑仕事と論文の両立が求められるので少しジレンマがあるかもしれません。

―具体的な仕事内容まで教えていただきありがとうございました。最後に学生に一言お願いします!
 「現場」を見てください。実際に現場を見ると、考えている世界じゃないかもしれないし、より良いイメージを持たれるかもしれない。当機構もインターンシップ制度がありますし、そのような色々な機会を活用して現場を見てほしいですね。

公式サイト

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
⇒ http://www.naro.affrc.go.jp/




※記載情報は取材当時のものです。
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