大学生が見た農業の最前線

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在来種の野菜を守る!

「F1種の野菜も必要だと思います。ただその一方で、在来種の野菜の存在も知ってもらいたい。
大事な農の文化だから。そして『今日は在来種の野菜を食べよう』と選択する社会を作っていきたい」。
そう仰る高橋さんに、在来種の野菜を守る取組みや想いについて伺いました!

プロフィール

高橋一也さん
warmerwarmer 代表

 1970年生まれ。高等学校卒業後、中国上海の華東師範大学に留学。その後(株)キハチアンドエス青山本店に調理師として勤務するなか「有機野菜」と出逢う。1998年に自然食品小売業(株)ナチュラルハウスに入社。同社の事業を無添加食品事業からオーガニック食品への切りかえに推進、店舗統括、販売企画、商品部青果バイヤー等の業務から取締役へ就任。売上高50億円の会社経営に携わる。
 2011年3月の東日本大震災をきっかけに同社取締役を辞任し、warmerwarmerとして独立。古来種野菜(固定種・在来種)の販売事業の構築、有機農業者支援、次世代のオーガニック市場の開拓等を目的に活動している。著書に「古来種野菜を食べてください」(晶文社)がある。

在来種の野菜を守る!

―なぜ在来種の野菜を守ろうと思ったのですか?
 約800年前から続く「平家大根」との出会いがすべての始まりです。それまでは野菜に対して深く考えることはありませんでした。「平家大根」との出会いは前職で野菜のバイヤーをしている時です。当時は有機JAS認証制度が始まったころで、自社基準から国の基準に変えないといけなくなったため、全国を回って認証取得のお願いをしていました。その時にたまたま出会って、食べてみると凄く美味しくて…、辛みがあって、苦みがあって。その時の「美味しい」がきっかけで、「在来種の野菜を守りたい、残したい」と思うようになりました。ただ在来種の野菜は、収量が安定しない、大量ロットへの対応が難しい、形や大きさが様々等の特徴があるため、前職では流通にのせることが厳しかったんです。とはいえ野菜なので食べる人・買ってくれる人がいないと作られなくなってしまう。
 「何かできないか」と考えている時に、高知県の有機農業者・故山下一穂さんから「世の中は、自分がこうしたいと想いを持った人が、社会を作っているんだから、やったらいいじゃない」って言われたんです。それで気持ちが楽になったことと、東日本大震災が起こったことをきっかけに、前職を辞めて起業しました。

―在来種の野菜を守るために起業されたのですね。
 大変ですけどね。お金にはなかなかならないことをしているので(笑)。でも今、誰かが守らないと、在来種の野菜は途絶えてしまう。在来種の野菜を守っているのは戦後を生き抜いてきたおじいさん・おばあさん達ですが、毎年何人か亡くなっていて…それが一番辛いですね。今は90名程の農家さんとお付き合いをしていますが、皆さん家族みたいなものですから。野菜が届いた時も、段ボールを開けたときに野菜が人に見えて涙が出てきますね。

―そうなのですね…。ただ逆説的になりますが、沢山売れると生産量が追い付かなくなりませんか?
 そうなれば作る人も増えると思います。だからこそ私たちの役割は「買う人を増やすこと」なんです。大消費地である東京で暮らす人達が「今日は在来種の野菜を買おう」と選択する社会を作っていきたい。「いいね」と「買う」は違いますからね。イベント等を通して在来種の野菜の存在を知ってもらい、「買う」ところまで持っていく。それが流通業に携わる私たちの大きな役割なんです。

―値段はどのように決めるのですか?
 農家さんに決めてもらっています。なので値段は様々です。大事にしているのは、「その人の値段に自分たちが寄り添えるかどうか」ということ。その値段に自分たちの利益を上乗せして販売していますが、なかには「どうしても食べてほしい」と思い利益度外視で売るものもあります。顔で笑って心で泣いて…(笑)。

―誰にどう売るのか・買ってもらいたいかを常に考えられているのですね。最後に今後の目標を教えてください!
 まずは色んな人たちに、こういう野菜があることを知ってほしい。そして一人でも多くの人に食べてもらいたいですね!

在来種(固定種)とF1種

 在来種(固定種)とは、その地域で昔から作られ、長い時間をかけて選抜を繰り返して根付いた品種のこと。自家採種による確保が一般的で、市場に出回ることは少ない。
 F1種(first filial generationの略)とは、異なる性質を持つ品種間で交雑をして出来た品種(一代雑種)のこと。雑種強勢により栽培面や品質面で利点が大きいため、流通している野菜はほとんどF1種である。なお、F1種同士の交配でできる種子(F2)は性質がバラバラになるため、自家採種をしても同じ性質の種を採ることは期待できない。



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