大学生が見た農業の最前線

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【農学系女子大生の授業ノート】

環境保全型農業について

農業・農村の多面的機能として、水源涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成など、農業は国土の保全の役割を担っています。一方、農業で必須の肥料や農薬は水質汚染という深刻な問題も引き起こしているのです。
そこで今回は、肥料や農薬を上手に使う、環境保全型農業について調べてみました!

① 農業が環境に与える影響

●畑作や果樹栽培では…
過剰に施肥された肥料が地下水や河川水に流亡し、水質の悪化が問題になっています。特に土壌に保持されにくい硝酸態窒素が水系に流れ込みやすく、硝酸態窒素を過剰摂取すると人体に悪影響があります。

●水田では…
水田はほとんどの栽培期間中、水をためているため土壌は還元状態(酸素がない状態)となります。その結果、硝酸態窒素が生じにくいため地下水への養分溶脱が起こりにくいうえに、上流の田から灌漑水を通して栄養分が流れ下流の田で使われるなど稲作はもともと環境保全的な特性を持っています。
一方で、水田からの温室効果ガスであるメタンガスの発生や農薬の使用による水生昆虫の減少など、環境への影響も問題視されています。

●畜産では…
排せつ物には多量の肥料成分が含まれますが、厩肥として適切に活用しないと、水系に流亡し水質汚染の原因となります。

② 環境保全型農業とは?

●農林水産省によると…
「環境保全型農業の基本的考え方」のなかで、「農業の物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」と規定されています。

●有機農業との違いは?
化学肥料や農薬を生産性が維持される程度使用することができる点が有機農業と異なりますが、厩肥や落ち葉などを農地に入れて物質循環を図る点など考え方が共通する部分もあります。

●化学肥料と有機質肥料の違いは?

*化学肥料とは…
化学的に合成された肥料で植物がすぐ吸収できる形の栄養分を含んでいて、すぐに効率よく効かせることができます。しかし、農地外に流亡しやすいこと、製造にエネルギーが必要なこと、原料を海外に頼っていることなどが課題です。生育段階に合わせて必要な分だけ栄養分が溶出する先進的な化学肥料の利用や適切な施肥により、適切に用いることが大切です。

*有機質肥料とは…
植物や動物由来原料をもとに製造される肥料で遅効性のものが多いです。土壌の物理的な構造を改良する役割もあります。原料は国内の廃棄物であることも多く循環が生まれ環境保全的です。ただし過剰投入は水質汚染につながるため、適正量を利用する必要があります。

③ 稲作における取り組み

●環境保全型農業の取り組み例

*「土づくり」
 ・たい肥など有機質資材を施用した土づくり
 ・土壌診断による適切な施用量を守ること
 ・カバークロップや緑肥の活用  …など

*「肥料を適切に使う」
 ・肥効が調節できる化学肥料の活用や生育段階に合わせた施肥管理など

*「化学合成農薬低減」
 ・種子伝染病を防除するための温湯消毒にする
 ・合鴨農法(除草剤を使用せず、合鴨に草を食べてもらう)などほかの防除方法と組み合わせて使用量を減らす。

*「畜産と耕地の連携」
 家畜の糞には、多量の栄養分が含まれているため、これを耕地に還元し資源循環させることが必要。

以上のような取組みで、肥料の流亡を抑えたり、土づくりを進めたり、 水田・水路などの水生生物の保護や水質改善が進められています!

④ 環境保全型農業を取り巻く環境

●日本では…
平成23年度から「環境保全型農業直接支払」が実施され、自然環境保全型農業を行うために追加で必要となるコストを支援する政策がスタートしました。

●海外では・・・
ヨーロッパを中心に農業者・消費者共に環境保全型農業への意識が高いと言われています。政府による環境保全型農業への補助が支持されています。

→日本はまだまだ消費者の農業と環境問題への関心が低く、安くて高品質、良い見た目の農産物への関心が強い。
→消費者への啓発活動や流通による環境保全型農業と消費者のかけ橋の機能の強化が必要と考えられます。

★参考:11ページに環境保全型農業のお米を使った事例あり!

【参考・引用】

・農林水産省資料「環境保全型農業の推進について」
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/attach/pdf/index-37.pdf
・西尾道徳「農業と環境汚染ー日本と世界の土壌環境政策と技術ー」農文協(2005)



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