特集 「地域農業」を探る!
【4】地場野菜の販売×地域農業
東京郊外の国立の野菜・加工品を、新鮮さと仕入れにこだわって販売する「しゅんかしゅんか」。まちづくりの観点から都市農業を支える、(株)エマリコくにたち代表取締役・菱沼さんにお話をお聞きしました!
菱沼 勇介
神奈川県出身。一橋大学卒業後、大手不動産会社とコンサルティング会社に勤めた後、NPO法人地域自給くにたちに携わる(現・事務局長)。その後、28歳で起業し(株)エマリコくにたちを設立する。現在、エマリコの小売店舗「しゅんかしゅんか」の運営を始め、まちづくりの観点から国立農業の活性化に尽力している。
―「しゅんかしゅんか」はどのようなお店ですか?
「この街に農地を残していこう」という想いから、地元・国立の野菜や加工品を中心に販売しているお店です。うちのこだわりは鮮度です。鮮度って、「買った日」ではなく「食べる瞬間」なんですよね。いくら美味しい野菜でも、冷蔵庫に入れっぱなしになっていたら意味がない。そこで、お客様には「収穫した日」を提示しています。また、「毎日使える便利な直売所にしたい」と思い、アクセスの良い駅前に店舗を出しています。ただ、駅前だと家賃が高いので、高い家賃を支払えるビジネスモデルを作る必要があります。
当店も運営会社である(株)エマリコも、これらの想いを達成するため、28才で起業し設立しました。
―起業されたきっかけは?
大学時代は経営学を学び、卒業後は大手企業で働いていましたが、大手企業で経営学の知識を使えるようになるのって役員クラスになってからじゃないですか。それまで待てないと思ったし、学生の頃からなんとなく「起業したい」と思っていたので。
―そう思われたのはなぜですか?
大学2年生の時に「まちづくり」という授業に出会ったことから始まります。ある商店街の活性化を目的に、商店街の方・大学教授と学生・行政が一緒になり活動していたのですが、僕は空き店舗を活用したカフェの運営を中心に活動していました。また、この授業をきっかけに様々なプロジェクトの運営もしていました。この時の経験が一番大きいですね。「起業するなら国立」と思ったのも、学生の頃にこの地域の方々とネットワークを築けたからです。いうならば「特殊なUターン」ですね(笑)。
―新しいですね!もともと「国立の農業をなんとかしたい!」と思い起業されたのですか?
農業に踏み込んだのは、起業前から携わっているNPO法人地域自給くにたちの活動に惚れ込んだというのが大きいですね。この法人では地元・国立の農業を地域住民に広めるため、給食に地場野菜を導入したり、土曜日に即売会を開催するなど様々な活動をしています。また、地域の方々に「農業がんばってよ」と言われたのも大きかったですね。活動の資源は「人・物・金・ノウハウ」と言われますが、うちは「地域ネットワーク」を第5の資源として捉えています。NPOはじめ、この地域で関わる方々との繋がりは大切にしたいですね。
―この地域には、どのような農家さんが多いですか?
色んなキャラクターの方がいらっしゃいます。国立市の農業は「生産緑地地区」に位置づけられていますが、市街化が進む中で、土地を売らずに都市農業を続けているというだけで、いい意味で「ぶっ飛んで」ますよね(笑)。農家さんに限らず、豆腐屋さんも納豆屋さんも面白い方が多い。「ぶっ飛んだ」人がたくさんいる街って面白いし、そういう人を応援していく会社にしたい。商店街も、町工場も、学校も、 農地もある、そういうごちゃごちゃした「まち」が「豊かなまち」だと思うんですよね。
―まちづくりと農業、相乗効果がありますね!今後も面白い展開になりそうですね!
実はこの5月から「くにたち村酒場」というワインバルを始めるんですよ。若い層やサラリーマン世代がワインの肴に国立野菜を食べながら、地域農業についても知れる仕掛けを作る。これまで対象にしてきた子どもや主婦層に加え、この層が入ることで、全ての層に農業情報や国立野菜が提供できます。
幅広い層に情報を発信する目的は、地域住民が地域農業を知ることで、農業を変えていく農家さんを地域全体でサポートできると思うからです。都市農業では、耕されなくなった農地は住宅や駐車場、コンビニ等に変わってしまい二度と農地に戻ることはありませんし、そもそも農地に対して厳しい法制度があります。都市農業と地域農業では根本的に抱える問題が違いますし、この問題は国立だけで解決できる事ではないので、近隣の都市地域も巻き込みながら解決していきたいと思っています。
―最後に、学生に一言お願いします。
「いろんな生き方がある」ことを知る方が良いと思います。僕はたまたま学生時代に商店街の親父さんや地域の方々と付き合う機会があったからこそ今の活動がありますが、それがなければ未だに大企業であくせく働いていたと思います。大企業に勤めることも公務員になる事も大事なことだけど、それだけを見るのではなく、色んな活動を通して様々な経験を積むと良いですね!
【参考】都市農業関連用語
■ 都市農業とは?
都市農業は、
@ 新鮮で安全な農産物の供給
A 身近な農業体験・交流活動の場の提供
B 災害時の防災空間の確保
C やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供
D 国土・環境の保全
E 都市住民の農業への理解の醸成
といった多様な役割を果たしている。
(引用:「都市農業をめぐる情勢について」農林水産省 農村振興局 資料より)
■「生産緑地地区」とは?
市街化区域内にある一定の要件を満たす農地を農業生産活動を通して緑地として計画的に保全し、良好な都市環境の形成を図るための地域地区です。
生産緑地地区に指定された場合は、農地として管理しなければならず建築物の建築等農業生産に関係のない行為は規制されることとなります。
(引用:国土交通省 都市・地域整備局 都市計画課「みんなで進めるまちづくりの話」WEBサイトより)
■ 生産緑地地区の指定(生産緑地法第3条)
市町村は、市街化区域内の農地で、次に該当する区域について都市計画に生産緑地地区を定めることができる。
a.良好な生活環境の確保に相当の効果があり、 公共施設等の敷地に供する用地として適しているもの
b.500m 以上の面積
c.農林業の継続が可能な条件を備えているもの
(引用:国土交通省 都市・地域整備局 公園緑地・景観課公園とみどりWEBサイトより)







